こんにちは。普段はバックエンドとフロントエンドをまたいで開発をしているエンジニアです。先日、あるAPIのパフォーマンス調査をしていたとき、ふと「普段何気なく見ている指標の裏側には、もっと深い情報が隠れているのではないか」と思い立ち、いろいろ調べてみました。今日はその発見を皆さんと共有できればと思います。
APIの開発やテストをしていると、レスポンスボディや応答時間といったわかりやすい指標ばかりに目が行きがちです。でも実際には、これらの表面に見える情報以外にも、通信の基礎部分やセキュリティ、パフォーマンスの細かい段階まで、多くの「隠れた指標」が存在しています。これらの指標を理解することで、APIのパフォーマンスボトルネックの分析やセキュリティリスクの調査が格段にやりやすくなりました。
今回は、実際に私が経験したトラブルシューティングの事例も交えながら、これらの指標について深堀りしていきたいと思います。
通信基礎指標:APIリクエストの「身元証明書」
宅配便を送るときに発送元と宛先の住所、配送方法を明確にする必要があるのと同じで、APIリクエストにもデータを正確に転送するための「基本情報」が欠かせません。これらの指標は、通信全体の土台となるものです。
EchoAPI Network 指標
1. HTTP Version:通信の「言語バージョン」
- 意味: クライアントとサーバーが使っているHTTPプロトコルのバージョン
- 私の気づき: HTTP/1.0で頻繁にAPIを呼び出すのは、電話で一言話すたびに切って、またダイヤルし直すような非効率な行為でした。HTTP/1.1のkeep-alive対応で、この無駄がなくなりました
- 実例: ある決済APIでHTTP/1.0を使い続けていたため、ピーク時に1秒間に数千回も接続を確立・切断していました。1.1にアップグレードしたら、サーバー負荷が30%も減ったんです
2. Local Address:リクエストの「出発地」
- 意味: リクエストを送信するローカルデバイスのIPとポート
- 私の経験: あるAPIが頻繁にエラーを返す問題で、ログを確認したら見知らぬIPからのリクエストが混じっていて、悪意のあるアクセスだと判明しました
3. Remote Address:リクエストの「目的地」
- 意味: APIサーバーのIPアドレスとポート
- 気をつけていること: CDNを設定しているのにRemote Addressがオリジンサーバーを示している場合、CDNが機能していないサインです
セキュリティメカニズム指標:API通信の「防護盾」
ユーザー情報や決済データを扱うAPIでは、セキュリティメカニズムが命綱です。私も過去に証明書の期限切れで深夜対応した苦い経験があります…
1. TLS Protocol:暗号化の「プロトコルバージョン」
- 意味: TLSのバージョン(TLSv1.2、TLSv1.3など)
- 教訓: ある金融APIでTLSv1.0を使い続けていて、セキュリティスキャンで「Heartbleed」脆弱性を指摘されました。1.2にアップグレードしてようやくコンプライアンスを満たせました
2. Cipher Name:暗号化の「暗号帳」
- 意味: クライアントとサーバーが合意した暗号化スイート
- 注意点: RC4やDESといった脆弱なアルゴリズムがまだ使われていないか、定期的にチェックする必要があります
3. Certificate CN:サーバーの「身分証明書の氏名」
- 意味: サーバーSSL証明書の「共通名」
- たとえ: 宅配便を受け取るときに受取人の名前を確認するのと同じです。名前が違ったら受け取れません
4. Issuer CN:証明書の「発行機関」
- 意味: 証明書を発行した機関の名称
- 実例: 内部APIで自己署名証明書を使っていたら、外部クライアントが接続エラーになりました。Let's Encryptの証明書に変えたら解決しました
5. Valid Until:証明書の「有効期限」
- 意味: 証明書の失効日時
- 失敗談: 証明書の期限切れで2時間もサービスが停止したことがあります。今では30日前から監視するようにしています
パフォーマンス指標:APIリクエストの「速度計」
ユーザー体験を左右するパフォーマンス。私はこれらの指標を見ながら「ユーザーは今、どんな体験をしているんだろう」と想像するようにしています。
EchoAPI 応答時間指標
1. Prepare:リクエスト準備時間
- 意味: リクエストトリガーからネットワーク送信開始までの時間
- 改善例: あるECアプリでPrepare時間が300msもかかっていました。5回もローカルストレージをチェックしていたのが原因で、最適化後は50msに
2. DNS Lookup:ドメイン名解決時間
- 意味: ドメイン名をIPアドレスに変換する時間
- 対策: DNSキャッシュを有効にすると、初回リクエストの応答時間が150msも改善した例があります
3. TCP Handshake:TCP接続確立時間
- 意味: 3ウェイハンドシェイクによる接続確立時間
- トラブル事例: あるゲームAPIでTCP半接続キューの設定が小さすぎて、ピーク時にハンドシェイク時間が500msまで悪化しました
4. SSL Handshake:SSL暗号化ハンドシェイク時間
- 意味: HTTPS暗号化接続確立時間
- 最適化: ECDSA証明書に交換したら、SSL時間が250msから120msに半減しました
5. TTFB(Time To First Byte):初バイト応答時間
- 意味: リクエスト送信完了から最初の応答バイトを受信するまでの時間
- 核心指標: サーバー処理効率を直接反映します。1秒を超える場合は要調査です
6. Download:応答データダウンロード時間
- 意味: 最初のバイト受信から完全なデータ受信までの時間
- データ削減: あるユーザー情報APIで200以上のフィールドから必要な30フィールドに絞ったら、ダウンロード時間が400msから80msに
7. Process:クライアント処理時間
- 意味: クライアントでのデータ解析とレンダリング時間
- ユーザー体感: この時間が長いと「カクつき」としてユーザーが直接感じます
現場で役立つ:指標の連動分析パターン
単一の指標だけ見ていてもわからないことが、組み合わせることで見えてきます。私がよく使う分析パターンをいくつか紹介します。
パターン 1:APIの応答が全体的に遅い
- DNS Lookup + TCP Handshake が長い → ネットワーク経路かDNSの問題
- TTFB だけが異常に高い → サーバー処理かデータベースクエリのボトルネック
- Download 時間が長い → 応答データが大きすぎる
パターン 2:セキュリティ警告が表示される
- TLS Protocol が古い → 1.2以上にアップグレード
- Cipher Name に脆弱なアルゴリズム → 強力な暗号化スイートに交換
- Certificate CN 不一致 → 証明書設定ミス or フィッシングの可能性
パターン 3:APIが突然使えなくなる
- 証明書の期限切れ → Valid Until を確認して緊急更新
- Remote Address が変わる → DNS異常 or サーバークラスター障害
おわりに:指標は会話をする
APIリクエストの各種指標は、単なる数字の羅列ではなく、APIが私たちに語りかけている「健康状態」や「困りごと」だと私は考えています。
- 通信基礎指標は「データが正しい道を進んでいますか?」
- セキュリティ指標は「データは安全に守られていますか?」
- パフォーマンス指標は「データは速く届いていますか?」
と問いかけているようなものです。
これらの指標と真摯に向き合うことで、開発時にはリスクを未然に防ぎ、テスト時には問題をピンポイントで特定し、運用時には障害を素早く解決できるようになりました。私自身、これらの指標を深く理解してからは、APIとの付き合い方がずいぶんと変わりました。
次にAPIリクエストを分析する機会があったら、ぜひこれらの「隠れた指標」にも注目してみてください。きっと新しい発見があるはずです。
実際に手を動かしながら観察すると、より理解が深まりますので、おすすめです。それでは、また次の記事でお会いしましょう!
この記事は技術的な知見を共有することを目的としており、特定のサービスや製品の宣伝を意図したものではありません。実際の開発現場で役立つ情報をお届けできれば幸いです。



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