仕様セクション:H-Carrier(有用残差再注入)伝播と安定制御
概要
本プロセッサは、ユニット内部で発生する残差(排熱)Hを単なる損失として捨てず、
次段(または次ステップ)のしきい値・結合係数・減衰率に対する 適応型バイアス として再利用する。
ただし、Hの無条件再注入はフィードバック発振・ドリフト・飽和を招くため、
以下の3つのガードレール(安定条件)を I/O仕様として必須 とする。
1. Hの有用性保証(Threshold Gate)
目的:微小な定常ノイズ(量子化誤差・熱雑音相当)を循環させず、信号の急変(エッジ)に対応する有用残差のみをキャリアする。
定義(分解):
- H_s:符号付き残差(signed residual)
- H_m:残差強度(magnitude / energy)
例(1サンプル/1タイルいずれでも可):
- H_s := mean(heat) または sum(heat)
- H_m := mean(|heat|) または sum(|heat|) または sqrt(sum(heat^2))
閾値ゲート:
ユニット固有のノイズフロアを閾値 τ とし、H_m が τ を超える場合のみ再注入を許可する。
- ゲート係数:
- g := clip((H_m - τ) / κ, 0, 1) (κ はゲートの立ち上がり幅。κ→0 で hard gate、κ>0 で soft gate)
再注入バイアス(基本形):
- b := α · g · H_s
備考(推奨):
- τ は「量子化誤差相当」+「環境雑音下の安全マージン」で設定する。
- L/R交差注入に用いる場合、Hは差分残差(differential residual)として構成し、common-mode成分を抑制する。
2. リーク積分によるドリフト防止(Leaky Integration)
目的:Hの再注入が蓄積してDCオフセット化し、飽和・偏り・環境変化への追従遅れを起こすことを防ぐ。
リーク付き蓄積:
- Ĥ_s[t] := (1 - λ) · Ĥ_s[t-1] + λ · H_s[t] (0 < λ ≤ 1)
同様に強度側も必要なら:
- Ĥ_m[t] := (1 - λ_m) · Ĥ_m[t-1] + λ_m · H_m[t]
再注入:
- b[t] := α · g[t] · Ĥ_s[t]
仕様パラメータ:
- λ(リーク係数):忘却の速さ(時間定数)
- λ が小さいほど「ゆっくり適応」、大きいほど「素早く適応」
- 設計ルール(推奨):ユースケースに応じて λ を定め、急変ノイズ環境でドリフトしないことを確認する。
3. ループ利得の拘束(Stability Loop-Gain Constraint)
目的:H-Carrier再注入が正帰還として暴走することを防ぎ、全入力条件で実用上の安定を担保する。
基本制約(十分条件):
再注入の実効ループ利得を 1 未満に拘束する。
- 実効利得:
- G_eff := |α| · g_max · C
- 要件:G_eff < 1
ここで、
- α:再注入利得(設計パラメータ)
- g_max:ゲート係数の最大値(通常 1)
- C:ユニットの結合増幅係数(トポロジーと更新則に依存する上界)
逆フィボナッチ収束係数との相関(推奨):
本系は収束更新で INV_PHI = φ^{-1} を用いるため、保守的には以下を推奨する:
- |α| ≤ (1 - INV_PHI) · β (0 < β < 1 は安全率。例:β=0.5〜0.9)
直観:
- INV_PHI が大きい(収束が弱い)ほど、α を小さくする必要がある。
- 収束が強いほど、H-Carrierを許容できる。
実装上の注意:
- 飽和(clip)を必須とし、バイアスbの上限 |b| ≤ b_max を設ける。
- ユニット間交差注入(L↔R)の場合、帯域/モード限定(または差分残差化)と組み合わせる。
I/O仕様(最小セット)
各ユニットは以下の3出力を持つ:
- y_I, y_Q:主信号(I/Qまたは2相当成分)
- H_s, H_m:残差(符号付き/強度)
H-Carrier再注入を有効化する場合、上記 1〜3 の条件を満たすこと。
満たさない場合、Hは「観測専用(診断ポート)」として扱う。
用語(短縮)
- H(heat):残差/排熱。単なる損失ではなく、未整定成分の情報キャリア。
- H-Carrier:Hを次段・次ステップのバイアスとして運ぶ仕組み。
- g(gate):有用残差のみ通すフィルタ係数。
- λ(leak):過去残差を忘却する係数(ドリフト防止)。
- α(gain):再注入強度(ループ利得を決める)。
Top comments (0)