AIで漫画を作るとき、最初に長いプロンプトを書く人は多いと思います。
登場人物の外見、服装、場所、表情、動作、時間帯、カメラの位置、画風まで、一度に細かく指定します。
説明を増やせば、頭の中にある場面へ近づくように感じるからです。
しかし、漫画制作では、長いプロンプトがそのまま良い結果につながるとは限りません。
一枚のイラストとしてはきれいでも、漫画として並べると、何を伝えるコマなのか分からない。人物が同時に複数の動作をしている。前後のコマがつながらない。
こうした問題は、描写が足りないからではなく、ひとつの画像へ多くの役割を持たせすぎたことから起こります。
私は現在、画像生成の前に、各コマの役割を一文で決めています。
ストーリーと画像の指示は別のもの
例えば、次のような短い話を漫画にするとします。
仕事を終えた女性が、駅で長い間連絡を取っていなかった友人からメッセージを受け取る。
この文章には、物語全体は書かれています。
しかし、このまま画像生成AIへ入力しても、漫画の構成は決まりません。
AIは、駅全体を見せるべきなのか、スマートフォンを見せるべきなのか、女性の表情を中心にするべきなのかを判断しなければなりません。
結果として、一枚の中に駅、人物、スマートフォン、メッセージ、驚いた表情を全部入れようとします。
情報は多いのに、どこを見ればよいのか分からない画像になります。
そこで、まず読者に伝える順番を分けます。
1コマ目
仕事帰りの遅い時間であることを見せる。
2コマ目
女性のスマートフォンに通知が届く。
3コマ目
送信者が、長く連絡を取っていなかった友人だと分かる。
4コマ目
女性の表情が変わる。
ここまで決めると、それぞれの画像で必要なものが明確になります。
1コマ目では、スマートフォンの画面を見せる必要はありません。
3コマ目では、駅全体を描く必要はありません。
4コマ目では、友人の情報をもう一度説明する必要はありません。
漫画は、一枚の画像ですべてを説明するものではありません。
複数のコマへ情報を分け、順番に見せる表現です。
1コマには一つの変化だけを入れる
AI漫画で不自然になりやすい指示の一つが、時間の異なる動作を一つの画像へ入れることです。
例えば、次のようなプロンプトです。
女性がスマートフォンを確認し、驚いて立ち上がり、改札へ走り出す。
この文章には、少なくとも三つの動作があります。
- スマートフォンを見る
- 驚く
- 走り出す
人は文章を時間順に理解できます。
しかし、一枚の静止画像では、三つの動作を同時に見せることはできません。
スマートフォンを持って走る女性は生成できても、メッセージを見て驚いたという原因までは伝わりません。
この場合は、三つのコマへ分けます。
- スマートフォンを見る
- 表情が変わる
- 改札へ向かって走る
一コマにつき一つの変化にすると、画像を作るときも、読者が読むときも迷いません。
コマの仕様は五項目で足りる
複雑な絵コンテ資料を作る必要はありません。
短い漫画なら、各コマについて次の五項目を書けば十分です。
目的
このコマで読者が新しく知ることは何か。
登場人物
誰が画面に入り、誰は入らないか。
動作
人物が何をしているか。一つだけ書く。
画角
場所全体、全身、上半身、顔、手元、物のどれを見せるか。
次への接続
次のコマを読みたくなる情報を何にするか。
先ほどの例なら、次のように書けます。
1コマ目
- 目的:遅い時間に一人で駅にいることを示す
- 登場人物:女性一人
- 動作:ホームで電車を待っている
- 画角:駅と人物が見える遠景
- 接続:手にスマートフォンを持っている
2コマ目
- 目的:通知が届いたことを示す
- 登場人物:女性の手だけ
- 動作:通知画面を開く
- 画角:手元のクローズアップ
- 接続:送信者名は一部だけ見せる
3コマ目
- 目的:昔の友人からの連絡だと示す
- 登場人物:なし
- 動作:スマートフォン画面が表示されている
- 画角:画面のクローズアップ
- 接続:メッセージ本文は短くする
4コマ目
- 目的:女性の感情の変化を見せる
- 登場人物:女性一人
- 動作:画面を見たまま動きを止める
- 画角:顔のクローズアップ
- 接続:返信するか迷っていることを残す
この状態になってから、各コマ用のプロンプトを書きます。
キャラクター設定は毎回書き換えない
同じ人物を複数のコマに登場させる場合、変わらない情報と変わる情報を分けます。
固定情報
- 27歳の女性
- あごまでの黒いボブ
- 薄い前髪
- 濃いグレーのコート
- 白いシャツ
- 黒いショルダーバッグ
- 小さな銀色のピアス
コマごとに変える情報
- ホームで電車を待っている
- スマートフォンを見下ろしている
- 目を見開く
- 返信画面を開いたまま指を止める
固定情報は共通して使い、動作と表情だけを変更します。
毎回、人物全体を違う文章で説明すると、同じ人物であるはずなのに、髪型や服装の解釈が変わりやすくなります。
構図は見栄えではなく、情報で決める
AI画像では、顔が大きく見える上半身の構図が出やすい傾向があります。
一枚のイラストなら問題ありません。
しかし、漫画のすべてのコマが正面の上半身になると、物語が動いて見えません。
構図は、そのコマで必要な情報によって選びます。
- 場所を説明するなら遠景
- 人物の行動を見せるなら全身や上半身
- 物を見せるなら手元
- 感情を見せるなら顔
- 人間関係を見せるなら二人を同じ画面に入れる
- 緊張感を出すなら、あえて人物を見せない
多様な構図を使うこと自体が目的ではありません。
読者が見るべき対象に合わせて距離を変えることが重要です。
一ページ全体を一度に生成しない
複数のコマが配置された完成ページを一度に生成できれば、効率がよいように見えます。
しかし、一つのコマだけ失敗しても、ページ全体を作り直すことになります。
再生成すると、成功していた人物の顔や構図まで変わります。
短い作品でも、次の順番のほうが修正しやすくなります。
- 物語を一文で書く
- 読者に伝える情報の順番を決める
- コマごとの役割を一文で書く
- キャラクターの固定情報を決める
- 各コマを個別に作る
- 必要な画像だけを選ぶ
- 最後にコマを配置する
- セリフと吹き出しを入れる
手順は増えますが、問題が起きた場所だけを修正できます。
結果として、完成までのやり直しは減ります。
文章や場面を漫画として試作する場合は、ブラウザで利用できる AI漫画を作成 のようなツールを使い、まず短い場面から形にする方法があります。
ただし、どのツールを使う場合でも、長い物語を一度に入力して完成を待つより、コマごとの役割を先に決めたほうが、生成結果を評価しやすくなります。
最初は六コマ以内にする
初めて試す場合は、長い作品を作る必要はありません。
一つの出来事を選び、六コマ以内へ分けます。
そして、各コマに次の内容を書きます。
- 読者へ新しく伝える情報
- 登場人物
- 一つの動作
- 必要な画角
- 次のコマへの接続
この段階で役割を説明できないコマは、生成しても不要になる可能性が高いです。
AI漫画で最初に詳しく書くべきものは、画像の装飾表現ではありません。
読者が何を、どの順番で見るのかを決めたコマの設計です。
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