誤差を技術に戻す
TTM 事例研究編 ver0p6。地区風力と木綿機を、調整・制御・誤差の三分法で読み直す。
理論編の三分法を、太平洋沿岸都市の地区風力と木綿教授の小型風車に適用する。誤差は香港や欧州ではなく、風向・乱流と異常気象の二つだけにする。市場は適用文脈と棄却条件に分解する。
通貨 USD、期間 10 年、実質割引 3%。現状案は D2(固定 VAWT 屋上)と K0(原型 1kW)。数値は概算であり、実測ではない。
判定
- 誤差を技術に戻すと、単独とロバストが一致する。
- 地区は D9(沿岸 HAWT+街 PV)が両方で勝つ。効率 M9/M2=2.63。
- 木綿は F 最大が K5(0.5kW、別物)。1kW のままなら K3(静音翼)。
- 旧来の「4市場合法の D8」は、法規を誤差に混ぜた副作用である。
四つの問い
| 問い | 答え |
|---|---|
| 動特性の型はどれか | 総合SN比(単一次元)。誤差は技術を2つ |
| 調整・制御・誤差は何か | 風速密度時間/方案6因子/N1風向とN2台風 |
| 地区の単独とロバストは | どちらも D9。F は約 +876 万 USD/10年 |
| 木綿の1kW改善は | K3。K2 は N2 で F が上がる(乗法) |
1. 因子の置き直し
適用文脈は一つの沿岸都市に固定する。単価 0.18 USD/kWh、騒音上限 55 dBA、鳥指数 1.20。これらは誤差ではない。誤差は N1(風向・乱流)と N2(台風・突風)である。気温と湿度は全方案にほぼ同じ係数で乗るので、方案を分ける N1 の実体は風向・乱流とする。
| 群 | この案件での中身 |
|---|---|
| 調整因子 | A1 平均風速 5.2 m/s、A2 空気密度 1.00、A3 8760 h |
| 制御因子(地区) | 方式・基数・PV・静音・鳥・立地 |
| 制御因子(木綿) | 容量・弱風寄せ・台風寄せ・静音・鳥・蓄電 |
| 誤差 N1 | 風向・乱流。HAWT 0.72、VAWT 0.96、カム 0.94 |
| 誤差 N2 | 異常気象。耐風破壊は棄却。台風寄せは稼働率 0.92 |
| 予測 M | 調整と制御から作る年間発電量(kWh)。旧・信号 |
| 効率 | Mopt/M0。D9 は 2.63、K3 は 0.925、K5 は 0.524 |
信号の欄は無い。M は中間生成物として計算にだけ残る。
2. 案件A:地区風力
図1 不便・誰が・どこで・どう変えたい。必須フロアは 1kW・3MW・台風耐性。
必須フロアを割る案は改善ではなく別構想として扱う。庭先 5kW(D7)は分離に失敗しており、騒音と鳥で棄却、N2 では耐風破壊が加わる。
2.1 因子
図2 調整は予測 M、制御は方案、誤差は2つ。市場は文脈側。
| id | improve ↔ worsen | 物理量 | 行き先 |
|---|---|---|---|
| T1 | 発電量 ↔ 騒音 | M, dBA | M は一元。dBA は法規 |
| T2 | 市街地 ↔ 鳥・景観 | 鳥指数 | 棄却条件 |
| T3 | 弱風 ↔ 強風 | vin, vout | 調整の使用域と N2 |
| T4 | 初期費 ↔ 効率 | USD/kW, M | ΔCAPEX は一元 |
| T5 | 無風供給 ↔ 複雑さ | PV, 蓄電 | 予測 M の補完 |
2.2 単独とロバスト
N1 に固定した単独最適は D9(沿岸 HAWT+街 PV)。N1 と N2 の両方で棄却されない方案のうち平均 F 最大も D9 である。誤差を技術に戻すと、単独とロバストが一致する。
図3 D9 が両誤差で正の最大。D7 は欠け(棄却)。D8 は合法だが F が負。
| ID | 案 | M比 | ΔS% | F(N1) | F(N2) | 読み |
|---|---|---|---|---|---|---|
| D2 | 固定VAWT屋上 | 1.00 | 0 | 0 | 0 | 0点 |
| D9 | 沿岸HAWT+街PV | 2.63 | +163 | +876万 | +877万 | 単独もロバストも |
| D1 | 沿岸HAWT | 2.52 | +152 | +842万 | +861万 | 騒音源を街の外へ |
| D10 | カム200基 | 0.26 | -74 | +518万 | +595万 | 面積減、費用減が勝つ |
| D5 | カム+屋上PV | 2.78 | +58 | +290万 | +218万 | 無風を太陽光で埋める |
| D3 | カム×1500 | 1.97 | +97 | -43万 | -82万 | 面積増、費用が勝つ |
| D8 | 静音+鳥+共同体 | 1.71 | +68 | -321万 | -357万 | 合法。F 負 |
| D7 | 庭先5kW | 2.76 | +176 | 棄却 | 棄却 | 騒音+鳥。N2は破壊 |
単位は USD/10年。棄却は平均に入れない。
D9 の F が N2 でわずかに上がるのは、街 PV が台風の落ちを支えるからである。現状案 D2 は風だけなので N2 の減が大きい。差額(F)は、方案の強さだけでなく、0 点の弱さでも動く。
2.3 効率と実際
図4 横軸は予測 M、縦軸は実際 X。効率は線の傾きではなく M9/M2=2.63。
| 因子 | D2(現状) | D9(最適) | 効き |
|---|---|---|---|
| F1 方式 | 固定VAWT屋上 | 沿岸HAWT | 予測 M を引き上げる主因 |
| F2 基数 | 1500 | 2 | 大型化。分割の逆 |
| F3 PV | なし | 街PV | N2 の落ちを支える |
| F6 立地 | 屋上 | 沿岸 | dBA 53.4 → 48.0 |
旧来、4市場を誤差に置くと D8 だけが全市場で合法になり、平均 F は負だった。あれは法規上限を誤差に混ぜた結果である。技術誤差の下では D8 は合法だが、払う代金に見合わない。
3. 案件B:木綿機
金沢大学の木綿教授が提案する、カム制御の小型風車(2軸2カム、羽根約 2 m、定格 1kW)を改善する。必須フロアは 1kW 級、弱風起動、強風耐久である。調整因子は地区と同じ。制御だけが製品側である。
図5 N1 は全案が CAM なので差が小さい。方案を分けるのは N2 と容量である。
3.1 単独とロバスト
図6 F 最大は K5。1kW のままなら K3。K2 は N2 で棒が伸びる。
| ID | 案 | M比 | ΔS% | F(N1) | F(N2) | 読み |
|---|---|---|---|---|---|---|
| K0 | 原型1kW | 1.00 | 0 | 0 | 0 | 0点 |
| K5 | 0.5kW化 | 0.52 | -48 | +6,342 | +6,766 | F最大。別物 |
| K3 | 静音翼1kW | 0.93 | -8 | +3,180 | +3,174 | 1kW 改善 |
| K8 | 静音+鳥 | 0.90 | -10 | +2,715 | +2,708 | 逆を二枚 |
| K9 | 台風+静音+鳥 | 0.86 | -14 | +1,859 | +2,327 | N2 で伸びる |
| K2 | 台風寄せカム | 0.87 | -13 | +810 | +1,356 | N2 乗法 |
| K1 | 弱風寄せ | 1.20 | +20 | -647 | -785 | 面積増、費用勝つ |
| K6 | 2kW化 | 2.04 | +104 | -5,900 | -6,758 | 大きすぎる |
単位は USD/基/10年。K5 は 1kW ラインではない。
K5 の効率は 0.52 である。応答面積は半減するが、初期費と静音の経済が勝って F が最大になる。1kW 製品として残すなら K3 を先にする。応答面積は 7.5% 減るが、dBA が 45.1 から 35 に下がる。
4. 交互作用
交互作用は β の変化、あるいは誤差条件ごとの F の変化として読む。N1 は方式差(HAWT 対 VAWT)を出し、N2 は台風寄せの差を出す。誤差を市場に置くと、この二つが条例の差に埋もれる。
図7 K2 の F は N1 で +810、N2 で +1,356。台風寄せ × 異常気象の乗法。
| 比較 | 見え方 | 型 | 意味 |
|---|---|---|---|
| D9 の PV × N2 | N2 でも F が落ちない | 乗法 | 街PVが風の停止を支える |
| K2 × N2 | F が +810 → +1,356 | 乗法 | 台風寄せが異常気象で初めて効く |
| K3 × 鳥(K8) | F が +3,180 → +2,715 | 抑止 | 鳥マークの代金が静音の得を削る |
| D7 × N2 | 耐風破壊で方案無し | 閾値 | 庭先 HAWT は強風で土俵を外れる |
交互作用は列に割り当てない。組合せ表で読む。
5. 処方
5.1 地区
- この沿岸都市では D9 を採用してよい。単独とロバストが同じである。
- D7 は参考用。分離に失敗しており、N2 では壊れる。
- D8 を「ロバスト案」と呼ばない。あれは法規を誤差に混ぜたときの副作用である。
- 別の文脈(騒音 42 dBA など)へ持っていくときは、枠は触らず棄却限度だけ書き直す。
5.2 木綿機
- 1kW の製品として残すなら K3 を先にする。
- 容量を変えてよいなら K5 が F 最大。ただし別物として記録する。
- 台風常襲を重く見るなら K2 または K9。N2 で F が伸びる。
- 蓄電(K7)と 2kW 化(K6)は、いまの単価では回収しない。
5.3 共通
- 次の実測は、実風速・実騒音・実 CAPEX だけを右側に書く。
- 誤差の名前は技術で残す。国名に戻さない。
- M 比と F の符号が食い違うときは、内訳を先に読む。
参考文献
- [R1] Altshuller, G. S. (1984). Creativity as an Exact Science. Gordon and Breach.
- [R4] Taguchi, G. (1986). Introduction to Quality Engineering. Asian Productivity Organization.
- [R5] Taguchi, G., Chowdhury, S., Taguchi, S. (2000). Robust Engineering. McGraw-Hill.
- [R7] Kano, N., Seraku, N., Takahashi, F., Tsuji, S. (1984). Attractive Quality and Must-be Quality. 品質, 14(2), 39–48.
- [R11] Kumar, R., Bairwa, K. N. (2025). Optimizing Process Parameters in Plastic Injection Molding using the Taguchi Method. Evergreen, 12(2), 1177–1188.







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