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Ryuji Yabe
Ryuji Yabe

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ピンと床の摩擦係数 μ を変えたL18実験の統合査読

μ = 0.2 / 0.3 / 0.4 の数値実験は、現実の事例研究とどこまで一致するか

対象:論文ボウリング環境因子mu02 / mu03 / mu04、事例研究ボウリング(品質工学 Vol.28 No.5, 2020)、campaign.json、logic.js。日付:2026-09-05。

判定:再計算不要。もっともらしい環境因子は μ = 0.2。

3本の論文のSN比・感度・要因効果・最適水準・確認実験は、シミュレーション出力 campaign.json と完全に一致する。L18の割付けも標準直交表の第1〜第5列そのもので、望大特性の計算式も教科書どおりである。システムを作り直す理由はない。現実実験との照合はデシベルではなく倒ピン本数で行う。標準条件 6・7・7 本、確認平均 8.33 本、質量 16 lb、角度 0° が同時に合うのは μ = 0.2 だけである。その条件での最適制御は、角度 0°・位置 13.25 cm・球速 8 m/s・質量 16 lb・角速度 10 rad/s。

1. 先に結論を置く

3本の個別論文は、それぞれ環境因子(ピンと床の摩擦係数)を μ = 0.2、0.3、0.4 に固定して L18 直交表実験を走らせた記録である。数値の誤記、直交表の列ずれ、SN比の再計算不一致は見つからなかった。確認実験の利得も、標準条件からの差として正しく引かれている。

個別論文の書きぶりには軽いずれがある。角度のSN比差を「約 0.3 dB」と書いた箇所は、実測では 0.41〜0.50 dB である。また、事例研究のSN比最大点(最適水準A)は角度 0° であり、1° はポケットを狙うための後段チューニング(最適水準B)である。個別論文は 1° と対比して「事例と違う」と書いたが、SN比最大という手続きだけを見れば、シミュレーションも事例も 0° を選んでいる。これは文書の言い回しの問題で、実験のやり直し理由にはならない。

現実のマルチボディ解析と、今回の2次元インパルスモデルは物理の階層が違う。行ごとの倒ピン本数を一致させることは最初から期待できない。照合の軸は、同じ制御因子・同じ誤差因子・同じL18・同じ望大特性という実験骨格と、確認実験の平均本数である。その軸では μ = 0.2 が突出して近い。

問い 答え
3論文の数値は正しいか 正しい。再計算と一致し、重大な欠陥はない。
現実実験と整合するか 倒ピン本数で整合する。SN比のdB値は規約が違うので直接比較しない。
どの μ がもっともらしいか μ = 0.2。基準が完全一致し、最適の平均本数も 8.33 で一致する。
その μ での最適制御は何か 0° / 13.25 cm / 8 m/s / 16 lb / 10 rad/s。ポケットを外した 26.5 cm は捨てる。

2. 査読で何を検証したか

検証は4層にした。第1層は logic.js の直交表そのもの。標準 L18(2¹×3⁷)の18行を読み、第1列が2水準、第2列以降が3水準、各列の水準が同数回現れ、列1と列2〜8の直積が均等であることを確認した。tools/test_logic.js の直交性チェックと同じ内容である。

第2層は campaign.json の内部一貫性。各行の n₁,n₂,n₃ から、望大特性 η = −10 log₁₀[(1/n)Σ(1/yᵢ²)] と感度 S = 20 log₁₀(平均) を独立に計算し、ファイル値と 10⁻⁹ 未満で一致した。ゼロ本は対数発散を避けるため 0.5 本の下限を置いている。今回の54×3条件にゼロ本は出ていないので、下限は結果を動かしていない。

第3層は要因効果と加法モデル。因子ごとに水準平均を取り直し、総平均からの偏差和が予測SN比になることを確認した。μ = 0.2 の予測 18.26 dB に対し確認は 18.14 dB(差 −0.12 dB)。μ = 0.3 は予測 17.95 dB に対し確認 19.25 dB(差 +1.30 dB)。μ = 0.4 は予測 17.51 dB に対し確認 18.46 dB(差 +0.95 dB)。加法モデルのずれは相互作用の証拠であり、計算ミスの証拠ではない。

第4層は事例研究_ボウリング(篠原・種原, 2020)との照合。制御因子5つ、水準、誤差因子 0.04/0.05/0.06、L18の割付けは表4と完全に同じである。違うのは物理エンジン(3Dマルチボディ対2D円盤衝突)と、論文側のSN比dBの規約である。事例の表5を教科書の望大特性で再計算すると、最良は No.9、最悪は No.18 で論文の順位と一致する。スピアマン順位相関は 0.89。dBの絶対値はおおよそ2倍で、行によって比率がぶれる。デシベルを横並びにして「シミュレーションは弱い」と言うのは誤りである。倒ピン本数で見る。

2. 査読で何を検証したか

制御因子・誤差因子・環境因子を分けたP-diagram。レーンのオイルは誤差、ピン床摩擦は今回の実験因子。

3. シミュレーションモデルの骨格

レーン長 60 ft(18.288 m)、幅 41.5 in(1.055 m)、ボール半径 0.109 m、ピン間隔 12 in(0.3048 m)、ピン質量 1.53 kg。数値は USBC 規格と事例研究の解析モデルに合わせてある。ピンは平面図の円盤で、倒れたピンは有限質量の動体に昇格して隣のピンを叩く。ドミノを2次元で粗く再現する設計である。

フックは a_hook = −C_HOOK · ω · μ_lane、縦方向の減速は −μ_lane · g · 0.30。投出し角度 1° は実効 0.25° に縮小する。3Dの入射角 6° ポケットを、プランビューの微小角度で代用するための係数であり、個別論文が「角度のSN比差は小さい」と書いた理由でもある。幾何を潰している以上、角度因子の効果は現実より小さくなる。それは欠陥というより、2D化の代償である。

ピンの転倒しきい値は J_tip = m √(2 g r) · [1 + max(0, (μ_crit − μ_floor)/μ_crit)]、μ_crit = 0.25。床摩擦が高いほどグリップして倒れやすい。μ = 0.2 ではしきい値が基準より上がり、μ = 0.3 と 0.4 では μ_crit を超えるためしきい値は下限に張り付く。つまり μ = 0.3 と 0.4 の差は、転倒判定そのものではなく、倒れたあとの滑りとボールのピンデッキ抵抗(μ_floor × 0.3)に出る。

総平均SN比は μ を上げると 16.24 → 15.92 → 15.76 dB とわずかに下がる。転倒しきい値が下がれば平均本数は増えるはず、という直感には反する。高摩擦はピンを倒しやすくする一方で、倒れたピンの滑走を止め、連鎖を短くする。ボールもデッキ上で余分に減速する。環境因子を「大きいほど易しい」と読んではいけない。ロバスト設計の対象は、やさしい世界ではなく、ばらつきの残る世界である。

μ J_tip (N·s) 総平均SN比 dB 平均倒ピン本数 確認SN比 dB
0.2 1.992 16.24 8.33 18.14
0.3 1.660 15.92 9.33 19.25
0.4 1.660 15.76 8.67 18.46

3. シミュレーションモデルの骨格

転倒しきい値は μ=0.25 以上で頭打ち。総平均SN比は μ 上昇とともにわずかに下がる。

4. 品質工学の割付け

制御因子は投出し角度(0°/1°)、投出し位置(0 / 13.25 / 26.5 cm)、球速(6/7/8 m/s)、ボール質量(10/13/16 lb)、角速度(6/8/10 rad/s)。誤差因子はレーン動摩擦 0.04/0.05/0.06。事例研究と同一である。角速度の根拠も同じで、文献の一般値 10.8 rad/s を囲む3水準である。

特性値は倒ピン本数の望大特性。パラメータ設計解析支援ツール(塩沢, 2020)が扱う静特性の一つであり、シミュレータのL18画面は直交表・SN比・感度・要因効果・最適水準・確認実験・利得を一括で出す。塩沢ツールがExcelに埋め込む計算過程を、ブラウザ側で再現している。動特性(0点比例や標準SN比)は使わない。信号因子がないからである。

標準条件はすべて第2水準、すなわち 1°・13.25 cm・7 m/s・13 lb・8 rad/s。確認実験の対照は常にこの点である。最適水準は各因子でSN比最大の水準を拾い、総平均からの偏差を足して予測SN比を出す加法モデルである。直交表に現れない組合せを確認で撃つ、という教科書の手順を踏んでいる。

制御因子 第1水準 第2水準 第3水準
投出し角度 (°) 0 1
投出し位置 (cm) 0.0 13.25 26.5
球速 (m/s) 6 7 8
ボール質量 (lb) 10 13 16
角速度 (rad/s) 6 8 10

5. μ = 0.2 の実験結果

総平均SN比は 16.24 dB。最適水準は角度 0°、位置 13.25 cm、球速 8 m/s、質量 16 lb、角速度 10 rad/s。予測SN比 18.26 dB。確認は n = 10, 8, 7、平均 8.33 本、SN比 18.14 dB、感度 18.42 dB。標準条件は n = 6, 7, 7、平均 6.67 本、SN比 16.41 dB。利得は +1.73 dB、+1.67 本。

要因効果のレンジを大きい順に読む。位置が突出して効く。13.25 cm が 16.91 dB、0 cm が 16.71 dB、26.5 cm が 15.10 dB。右に出し過ぎるとポケットを外し、連鎖が切れる。次が質量(16 lb が最良)、球速(8 m/s が飛び抜け、6 と 7 はほぼ同じ)、角速度(10 rad/s)、角度(0° が 0.43 dB だけ良い)。

L18の生データで目を引くのは No.6 である。角度 0°・位置 13.25 cm・球速 8 m/s・質量 16 lb・角速度 6 rad/s で n = 9, 9, 10、SN比 19.37 dB、平均 9.33 本。加法モデルが選んだ最適(角速度だけ 10 に上げた点)の確認 10, 8, 7 より良い。相互作用が出ている。タグチの手続きは「直交表の最良行を採用する」ではなく「水準平均の山を合成して確認する」。確認は標準を上回ったので手続きは成立している。ただし現場に出すなら、No.6(回転を上げ過ぎない)も並記すべき候補である。

No.7(位置 26.5 cm、球速 6 m/s)は 5, 6, 5 でSN比 14.45 dB。外側スペア狙いに近い位置は、誤差の3水準すべてで連鎖しない。位置因子のレンジが大きい理由が、この行にそのまま出ている。

No. 角度° 位置cm 球速m/s 質量lb 回転rad/s n₁ n₂ n₃ SN比dB 感度dB
1 0 0 6 10 6 7 6 7 16.41 16.48
2 0 0 7 13 8 7 7 6 16.41 16.48
3 0 0 8 16 10 9 7 6 16.95 17.31
4 0 13.25 6 10 8 6 6 8 16.25 16.48
5 0 13.25 7 13 10 7 7 8 17.26 17.31
6 0 13.25 8 16 6 9 9 10 19.37 19.40
7 0 26.5 6 13 6 5 6 5 14.45 14.54
8 0 26.5 7 16 8 5 7 7 15.70 16.03
9 0 26.5 8 10 10 6 5 7 15.32 15.56
10 1 0 6 16 10 9 8 6 17.31 17.69
11 1 0 7 10 6 6 6 6 15.56 15.56
12 1 0 8 13 8 8 7 8 17.64 17.69
13 1 13.25 6 13 10 8 8 6 17.06 17.31
14 1 13.25 7 16 6 6 6 6 15.56 15.56
15 1 13.25 8 10 8 7 6 6 15.97 16.03
16 1 26.5 6 16 8 7 7 4 14.63 15.56
17 1 26.5 7 10 10 6 6 6 15.56 15.56
18 1 26.5 8 13 6 5 6 6 14.97 15.07

5. μ = 0.2 の実験結果

3つの μ でL18の山谷の形はほぼ同じ。位置 26.5 cm の行が谷、ポケット付近が山。

6. μ = 0.3 の実験結果

総平均SN比は 15.92 dB。最適水準は角度 0°、位置 13.25 cm、球速 8 m/s、質量 13 lb、角速度 10 rad/s。μ = 0.2 から変わるのは質量だけである。確認は n = 10, 10, 8、平均 9.33 本、SN比 19.25 dB。標準は再び 6, 7, 7。利得は +2.85 dB、+2.67 本。3条件のうち確認の平均本数が最も高い。

予測 17.95 dB に対し確認 19.25 dB。加法モデルより 1.30 dB 良い。良い方向のずれなので「失敗」ではない。因子間の相乗が、平均効果の足し算では拾いきれていない。質量の水準平均は 13 lb が 16.23 dB、16 lb が 16.10 dB で差は 0.13 dB しかない。μ = 0.2 では 16 lb が明確に山だった。床摩擦が上がると、重い球の押し込みより、倒れたあとの動きの方が支配的になる。

No.6 はここでも 9, 9, 10 である。環境因子を変えてもこの1行が動かない。ポケット・高速・重球の組み合わせは、回転が 6 rad/s でも3つの床で同じピンアクションを出す。2Dモデルの「当たり」が飽和している、と読むのが正直である。飽和している行は、μ の識別には使えない。識別に使えるのは、標準条件と、加法最適の確認である。

No. 角度° 位置cm 球速m/s 質量lb 回転rad/s n₁ n₂ n₃ SN比dB 感度dB
1 0 0 6 10 6 7 6 6 15.97 16.03
2 0 0 7 13 8 7 6 6 15.97 16.03
3 0 0 8 16 10 9 6 6 16.45 16.90
4 0 13.25 6 10 8 6 6 8 16.25 16.48
5 0 13.25 7 13 10 8 8 7 17.64 17.69
6 0 13.25 8 16 6 9 9 10 19.37 19.40
7 0 26.5 6 13 6 5 6 5 14.45 14.54
8 0 26.5 7 16 8 5 7 5 14.75 15.07
9 0 26.5 8 10 10 6 4 7 14.33 15.07
10 1 0 6 16 10 9 7 6 16.95 17.31
11 1 0 7 10 6 6 6 6 15.56 15.56
12 1 0 8 13 8 8 6 9 17.31 17.69
13 1 13.25 6 13 10 8 8 6 17.06 17.31
14 1 13.25 7 16 6 5 5 6 14.45 14.54
15 1 13.25 8 10 8 6 6 6 15.56 15.56
16 1 26.5 6 16 8 7 7 4 14.63 15.56
17 1 26.5 7 10 10 5 6 6 14.97 15.07
18 1 26.5 8 13 6 6 5 6 14.97 15.07

6. μ = 0.3 の実験結果

予測SN比(加法)と確認実験。μ=0.2 はほぼ一致、μ=0.3 と 0.4 は確認が予測を上回る。

7. μ = 0.4 の実験結果

総平均SN比は 15.76 dB で3条件の最低。最適水準の形は μ = 0.3 と同じ(0° / 13.25 cm / 8 m/s / 13 lb / 10 rad/s)。確認は n = 10, 9, 7、平均 8.67 本、SN比 18.46 dB。標準は 5, 7, 6、平均 6.00 本、SN比 15.32 dB。利得のdBは +3.14 で3条件最大だが、これは標準が沈んだためである。最適の絶対値は μ = 0.3 より劣る。

確認の 10, 9, 7 は、事例研究の最適水準D(球速を 6.1 m/s まで落とした点)の倒ピン本数と数字が一致する。一致は興味深いが、制御の中身が違う。事例のDは角度 1°・球速 6.1 m/s・質量 16 lb、こちらは角度 0°・球速 8 m/s・質量 13 lb。同じ本数を、別のレバーで出している。数字の一致を「同じ現象」と読んで採用してはいけない。

標準条件が 6, 7, 7 から 5, 7, 6 に落ちるのは、μ = 0.4 だけである。高摩擦のデッキで、第2水準のフックと質量が過不足になる。現実の第2水準は 6, 7, 7 のままなので、μ = 0.4 は基準点ですでに現実から外れる。

No. 角度° 位置cm 球速m/s 質量lb 回転rad/s n₁ n₂ n₃ SN比dB 感度dB
1 0 0 6 10 6 7 6 6 15.97 16.03
2 0 0 7 13 8 7 6 6 15.97 16.03
3 0 0 8 16 10 8 6 6 16.25 16.48
4 0 13.25 6 10 8 6 6 8 16.25 16.48
5 0 13.25 7 13 10 8 6 7 16.72 16.90
6 0 13.25 8 16 6 9 9 10 19.37 19.40
7 0 26.5 6 13 6 5 6 5 14.45 14.54
8 0 26.5 7 16 8 5 7 5 14.75 15.07
9 0 26.5 8 10 10 6 4 7 14.33 15.07
10 1 0 6 16 10 9 6 5 15.73 16.48
11 1 0 7 10 6 7 6 6 15.97 16.03
12 1 0 8 13 8 8 6 8 17.06 17.31
13 1 13.25 6 13 10 8 8 6 17.06 17.31
14 1 13.25 7 16 6 5 5 6 14.45 14.54
15 1 13.25 8 10 8 6 6 6 15.56 15.56
16 1 26.5 6 16 8 6 7 4 14.33 15.07
17 1 26.5 7 10 10 5 6 6 14.97 15.07
18 1 26.5 8 13 6 5 5 6 14.45 14.54

7.1 SN比と感度を手で追う

望大特性は η = −10 log₁₀[(1/n)Σ(1/yᵢ²)] である。μ = 0.2 の標準条件 6, 7, 7 を代入する。1/36 + 1/49 + 1/49 = 0.068594。n = 3 で割ると 0.022865。−10 log₁₀(0.022865) = 16.408 dB。campaign.json の baselineConf.sn と一致する。感度は 20 log₁₀(6.666…) = 16.478 dB。平均が高いほど感度は上がり、ばらつきが大きいほどSN比は感度より沈む。

同じ μ = 0.2 の確認 10, 8, 7 では 1/100 + 1/64 + 1/49 = 0.046033、割る3で 0.015344、η = 18.141 dB。標準との差 1.733 dB が利得である。平均は 8.333 本で感度 18.416 dB。SN比と感度の差は標準で 0.07 dB、最適で 0.28 dB。ばらつきは最適側でやや増えている。利得の本体は平均の底上げで、ばらつき削減ではない。事例研究が「ばらつきは残る」と書いた判断と、符号が同じである。

事例の最適B 7, 8, 10 を同じ式に入れる。1/49 + 1/64 + 1/100 = 0.046033。μ = 0.2 の確認と同じ MSD である。だからSN比も 18.141 dB で一致する。平均本数も (7+8+10)/3 = 8.333 で一致する。3つの数字の並べ替えが、同じ望大特性を与える。μ = 0.2 を選ぶ定量的な核がここにある。dB規約の違う事例表10の 36.6 dB と並べる必要はない。

ゼロ本の下限 0.5 は、今回一度も発動していない。仮に 4, 1, 0 のような行が出れば、0 を 0.5 に置き換えて η を計算する。事例の No.18 は 4, 1, 5 でゼロはない。教科書式では 4.35 dB、事例掲載値は 3.35 dB。低本数側で規約差が比率2から外れる。低本数の行ほど、論文側の換算が不安定に見える。だから照合は本数で行い、dBの絶対値で行わない。

加法モデルの予測は、総平均 + Σ(最適水準平均 − 総平均) である。μ = 0.2 では 16.242 + (16.455−16.242) + (16.910−16.242) + (16.702−16.242) + (16.586−16.242) + (16.576−16.242) = 18.261 dB。確認 18.141 dB との差 −0.12 dB は、相互作用がほとんど乗っていないことを示す。μ = 0.3 の +1.30 dB は逆に、合成した水準が直交表の平均効果以上に噛み合ったことを示す。どちらも計算は閉じている。予測と確認が一致しないこと自体を欠陥と呼ばない。一致しない量を書いて、次の実験の入力にする。

8. 3つの μ を横断して読む

最適水準で動かないものと動くものを分ける。動かないのは角度 0°、位置 13.25 cm、球速 8 m/s、角速度 10 rad/s。動くのは質量だけで、μ = 0.2 が 16 lb、μ = 0.3 と 0.4 が 13 lb。位置の谷(26.5 cm)は3条件すべてで深く、レンジの王者は常に位置である。ポケットへ入れることが、床摩擦より先に来る。

球速は3条件とも第3水準(8 m/s)が山で、第2水準(7 m/s)が谷に近い。事例研究の最適Aは 7 m/s を選んだ。2Dモデルは減速項が弱く、速い球の方がピンデッキまでエネルギーを残す。3Dのフック軌道では、速すぎると曲がりが足りずポケットの内側に入る、という逆の物語がある。だから球速の山が事例とずれるのは、モデル階層の差として説明する。欠陥としてコードを書き換える対象ではない。

利得を絶対値で競わせると μ = 0.4 が勝つ。採用の基準を利得に置くと、標準が悪い世界を「改善幅が大きい」と褒める誤りを犯す。照合の基準は、現実の標準 6.67 本と現実の最適B 8.33 本に、確認の絶対値が乗るかである。

因子 μ 水準1 水準2 水準3 レンジ
投出し角度 (°) 0.2 16.46 16.03 0.43
投出し角度 (°) 0.3 16.13 15.72 0.41
投出し角度 (°) 0.4 16.01 15.51 0.50
投出し位置 (cm) 0.2 16.71 16.91 15.10 1.81
投出し位置 (cm) 0.3 16.37 16.72 14.68 2.04
投出し位置 (cm) 0.4 16.16 16.57 14.55 2.02
球速 (m/s) 0.2 16.02 16.01 16.70 0.69
球速 (m/s) 0.3 15.88 15.56 16.33 0.78
球速 (m/s) 0.4 15.63 15.47 16.17 0.70
ボール質量 (lb) 0.2 15.84 16.30 16.59 0.74
ボール質量 (lb) 0.3 15.44 16.23 16.10 0.79
ボール質量 (lb) 0.4 15.51 15.95 15.81 0.44
角速度 (rad/s) 0.2 16.05 16.10 16.58 0.52
角速度 (rad/s) 0.3 15.79 15.74 16.23 0.49
角速度 (rad/s) 0.4 15.77 15.65 15.84 0.19

8. 3つの μ を横断して読む

要因効果。位置 13.25 cm が3本の μ で山、26.5 cm が谷。質量の山だけが μ で移る。

9. 現実の事例研究との照合

事例研究は汎用ソフトの3D CADとマルチボディで、接触剛性 4.0×10⁸ N/m、減衰をレール衝突実験から同定している。減衰 181〜190 N·s/m で移動距離が 0.527 m から 0.511 m へ単調に減る。今回の2Dモデルに減衰同定はない。反発係数 0.15(ピン同士)と 0.20(ボール−ピン)で代用している。物理の解像度は一段落ちる。そのうえで、実験の「問い方」は揃えている。

事例の表5(L18の倒ピン)と、シミュレーション18行の平均絶対誤差は、μ = 0.2 で 1.83 本、μ = 0.3 で 1.83 本、μ = 0.4 で 1.74 本。行単位ではどれも近いとは言えない。No.18 の現実 4, 1, 5 のような崩壊行は、シミュレーションでは 5〜6 本で底が浅い。2Dのドミノは大失敗をあまり出さない。行単位MAEで μ を選ぶのは誤りで、確認実験の対照点で選ぶ。

現実の第2水準は 6, 7, 7(平均 6.7 本)。μ = 0.2 と 0.3 の標準確認がまさに 6, 7, 7 である。μ = 0.4 は 5, 7, 6。基準点が合うのは 0.2 と 0.3。

現実の最適Bは 7, 8, 10(平均 8.3 本)。教科書の望大特性に入れると 18.14 dB。μ = 0.2 の最適確認は 10, 8, 7(平均 8.33 本、SN比 18.14 dB)。平均本数とSN比が一致し、3つの数字は並べ替えに近い。μ = 0.3 の確認 10, 10, 8 は平均 9.33 本で現実より楽観的。μ = 0.4 の 10, 9, 7 は最適Dの本数と一致するが、上に書いたとおりレバーが違う。

現実の最適A(SN比最大)は 0° / 13.25 cm / 7 m/s / 16 lb / 10 rad/s。μ = 0.2 の加法最適は球速だけ 8 m/s に置き換わった形である。質量 16 lb と角度 0° が残るのは μ = 0.2 だけ。μ = 0.3 と 0.4 は質量を 13 lb に落とす。事例が「重球+高回転+ポケット」と読んだ物語に、μ = 0.2 が一番近い。

事例は最適Aではポケットを外したため角度を 1° に上げ、さらに球速を 6.6、6.1 m/s へ落として内側入射を補正した。2Dモデルでは角度の実効が 0.25 倍なので、そのチューニングを再現しない。再現しないことを欠点とせず、パラメータ設計の第1段(直交表→加法最適→確認)だけを突き合わせる。第2段の軌道微調整は、3Dか実レーンでやる仕事である。

項目 n₁ n₂ n₃ 平均倒ピン本数 SN比dB
現実 第2水準 6 7 7 6.67 16.41
現実 最適A 9 6 8 7.67 17.31
現実 最適B 7 8 10 8.33 18.14
現実 最適D 10 9 7 8.67 18.46
μ=0.2 標準(第2水準) 6 7 7 6.67 16.41
μ=0.2 最適水準 10 8 7 8.33 18.14
μ=0.3 標準(第2水準) 6 7 7 6.67 16.41
μ=0.3 最適水準 10 10 8 9.33 19.25
μ=0.4 標準(第2水準) 5 7 6 6.00 15.32
μ=0.4 最適水準 10 9 7 8.67 18.46

9. 現実の事例研究との照合

確認の倒ピン。μ=0.2 の平均 8.33 本が現実の最適B(8.3 本)に重なる。

9.1 事例のSN比dBをそのまま使わない

事例表5の掲載SN比は、教科書の望大特性のおよそ2倍である。No.1 の 6, 3, 4 は教科書式 11.73 dB、掲載 23.46 dB で比率ちょうど2。No.8 の 8, 10, 7 も 18.14 dB に対し 36.28 dB でちょうど2。No.14 の 6, 7, 7 も 16.41 dB に対し 32.82 dB でちょうど2。一方 No.16 の 2, 5, 10 は教科書 10.00 dB、掲載 31.73 dB で比率 3.17。No.18 の 4, 1, 5 は 4.35 dB 対 3.35 dB で比率 0.77。低本数が混ざる行で換算が崩れる。

シミュレータの信頼性ボタンは、最良行 No.9 と最悪行 No.18 が論文順位と一致することを確認する。中位は入れ替わる。No.15(6, 7, 5)は掲載 19.70 dB で下から2番目だが、教科書式では 15.32 dB で中位である。No.16(2, 5, 10)は掲載 31.73 dB で中の上、教科書式では 10.00 dB で下から2番目。2本が混ざる行を、掲載値が過大評価している。望大特性は小さい y を 1/y² で強く罰する。掲載値がその罰を弱めているように見える行がある。

個別論文は事例のdBとシミュレーションのdBを並べていない。正しい。統合でも並べない。並べるのは本数と、同じ式で計算し直したSN比である。ツールが「約2倍、順位は一致」と注記した判断は、最良・最悪については支持できる。中位まで「同じ順位」と言い切ると、No.15 と No.16 で嘘になる。注記を「最良と最悪は一致。中位の順位相関は 0.89」に更新する。これは文書修正であり、再計算ではない。

事例表10の確認実験は、初期水準 SN比 26.9 dB、最適B 36.6 dB、利得 9.7 dB、横転ピン 6.7 本から 8.3 本と書く。同じ 6, 7, 7 と 7, 8, 10 を教科書式に入れると 16.41 dB と 18.14 dB、利得 1.73 dB。μ = 0.2 の確認利得 1.73 dB と数字が重なる。重なる対象を「掲載dB」から「同じ式のdB」と「本数」に移した瞬間に、シミュレーションは事例の確認実験を再現している、と言える。

10. もっともらしい環境因子は μ = 0.2

選定基準を明示する。第1に、標準条件の倒ピンが現実の第2水準と一致すること。第2に、加法最適の確認平均が現実の最適Bに近いこと。第3に、選ばれる制御水準が事例の最適Aに近いこと。第4に、モデルが置いた木−木の基準 μ_crit = 0.25 から遠くないこと。利得の大きさは使わない。

μ = 0.2 は4つを同時に満たす。標準 6, 7, 7。確認平均 8.33 本。質量 16 lb、角度 0°、位置 13.25 cm、回転 10 rad/s。μ_crit からの距離は 0.05。

μ = 0.3 は第1基準を満たし、確認の絶対値は最も高い(9.33 本)。木の運動摩擦として 0.3 は教科書的にも自然である。ただし質量が 13 lb に落ち、確認が現実より1本多い。楽観側である。物理の「らしさ」では μ = 0.3 に分がある。実験骨格との一致では μ = 0.2 に分がある。今回の問いは後者である。事例研究に一番近い世界を選べ、という問いだからである。

μ = 0.4 は捨てる。標準が沈み、質量の山が事例と違い、転倒しきい値はすでに μ = 0.3 と同じ下限に張り付いている。μ を 0.4 まで上げる意味は、滑走抵抗を増やすことだけになる。その効果は確認の平均を 9.33 から 8.67 へ下げ、現実の第2水準からも離す。

個別論文は「μ によって質量の最適が移る」と書いて終わりに近い。統合すると、移るということ自体が識別情報になる。質量の山が 16 lb に残っている世界が、事例の物語と同じ世界である。それが μ = 0.2 である。

μ 標準(第2水準) n 最適水準 n 平均倒ピン本数 利得 予測SN比 dB 確認SN比 dB ΔdB
0.2 6,7,7 10,8,7 +1.67 18.26 18.14 -0.12
0.3 6,7,7 10,10,8 +2.67 17.95 19.25 +1.30
0.4 5,7,6 10,9,7 +2.67 17.51 18.46 +0.95

10. もっともらしい環境因子は μ = 0.2

行単位MAEは μ の識別に使わない。確認の絶対値と選ばれた水準で選ぶ。

11. μ = 0.2 での最適制御条件

採用セットは次である。投出し角度 0°、投出し位置 13.25 cm(ポケット側)、球速 8 m/s、ボール質量 16 lb、角速度 10 rad/s。誤差因子 0.04/0.05/0.06 に対する確認は 10, 8, 7 本。平均 8.33 本。ストライク(10本)はオイルが薄い側(N₁)で出る。オイルが厚い側(N₃)では7本まで落ちる。事例が「完全にはばらつきを潰せない。球速だけ後でチューニングする」と書いた結論は、ここでも成立する。

位置 13.25 cm は必須である。26.5 cm は3つの μ すべてで谷であり、議論の余地がない。0 cm(中央)は 13.25 cm に近く、代替にはなるが山ではない。ポケットを外して「まっすぐ強く」は、このモデルでも負け因子である。

角度 0° はSN比最大だが、1° との差は 0.43 dB しかない。実レーンでポケットの見え方が違うなら、事例と同じく 1° へ上げてよい。2Dではその差を分解できない。制御の第一段では 0° を採り、第二段で目視のポケットに合わせて 1° を許可する、が実務的である。

球速 8 m/s はモデル内の山である。事例は 7 m/s を山とし、その後 6.6 と 6.1 へ下げた。2Dで 8 m/s を盲信して実レーンに持ち込むのは危険である。採用セットのうち「実レーンへ移植してよい芯」は、位置 13.25 cm、質量 16 lb、回転 10 rad/s である。球速はレーンコンディションのチューニングノブとして残す。これが事例の結論の再利用であり、シミュレーションが新しく付け足した主張ではない。

角速度 10 rad/s は水準平均では山だが、L18 No.6(6 rad/s)が μ = 0.2 で確認最適を上回った。回転を上げるとフックが増え、オイル厚い側でポケットを左に外す、という相互作用が疑われる。確認 10, 8, 7 の 7 本が N₃ であることも、その疑いに合う。実務では 10 rad/s を上限とし、オイルが厚い日は 6〜8 rad/s へ戻す。直交表の1行を過学習してはいけないが、無視もしない。

質量 16 lb は μ = 0.2 の識別そのものである。手が16 lb を扱えない場合は 13 lb へ落とす。μ = 0.3 の世界では 13 lb が山なので、その落ちは破滅ではない。ただし今回選んだ世界(事例に近い μ = 0.2)では、重い球が押し込みを稼ぐ。初心者向け教材として「持てる最重」を第一に書く。

制御の優先順位を、因子レンジで切る。μ = 0.2 のレンジは位置 1.81 dB、球速 0.69 dB、質量 0.74 dB、回転 0.52 dB、角度 0.43 dB。位置を外す損失は、他の4因子を全部最適にしても埋まらない。教材の最初の図は要因効果の位置パネルだけでよい。26.5 cm の谷を見せ、13.25 cm の山を見せる。球速と質量は二枚目である。

確認 10, 8, 7 を誤差水準に分解する。N₁(μ_lane=0.04)で10本、N₂ で8本、N₃ で7本。オイルが薄いほどストライクに近い。フックは μ_lane に比例するので、オイルが薄いと曲がりが小さく、厚いと大きい。最適の 0°・13.25 cm・8 m/s は、薄いオイルでポケットの芯を叩き、厚いオイルで左に余る、という読みができる。事例が球速を落とす方向で厚いオイルに合わせたのは、曲がりを増やすためである。2Dでも同じノブが残っている。採用セットに「速さは後で落とす」を残す理由が、N₃ の7本である。

標準条件 1°・13.25 cm・7 m/s・13 lb・8 rad/s は、位置だけはすでに山の上にいる。改善の本体は球速 7→8、質量 13→16、回転 8→10、角度 1→0 の4つである。位置を動かす改善ではない。ポケットに入っている球の、重さ・速さ・回転を盛る話である。初心者が位置も速さも同時にいじると、どのレバーが効いたか分からなくなる。直交表が教えてくれる順番は、位置を固定してから他を盛れ、である。

制御因子 標準(第2水準) 現実 最適A 現実 最適B μ=0.2 μ=0.3 μ=0.4
投出し角度 (°) 1 0 1 0 0 0
投出し位置 (cm) 13.25 13.25 13.25 13.25 13.25 13.25
球速 (m/s) 7 7 7 8 8 8
ボール質量 (lb) 13 16 16 16 13 13
角速度 (rad/s) 8 10 10 10 10 10

11. μ = 0.2 での最適制御条件

最適水準。角度・位置・球速・回転は μ で動かない。質量だけが 16 lb から 13 lb へ移る。

12. 解析支援ツールの表とグラフが示していること

シミュレータの「パラメータ設計解析支援ツール」画面は、塩沢(2020)がExcelで提供した流れを、倒ピン本数の静特性に特化して実装している。実験条件を μ だけ変えて54投し、要因効果の棒、最適水準、確認、事例表5との順位照合までを同一画面に出す。3論文の表3〜表6は、この画面の数値を μ ごとに書き起こしたものである。統合レポートの表も同じソースである。

ツール内の信頼性ボタンは、事例表5の n₁,n₂,n₃ に教科書の望大特性を適用し、最良行・最悪行が論文の順位と一致するかを見る。一致する。dBの絶対値が約2倍になることはツール自身が注記している。規約差は最適水準の選定を壊さない、という主張は、最良・最悪が No.9 と No.18 で揃っている以上、支持できる。中位の順位は入れ替わる(とくに No.15 と No.16)。中位の入れ替わりを隠さず、順位相関 0.89 と書いておく。

要因効果図の形は3つの μ で相似である。位置の山と谷、球速の第3水準、回転の第3水準。相似な図が3枚あるとき、読者は「どれでも同じ」と誤読する。同じなのは順位構造で、違うのは質量の山と、確認の絶対値である。ツールのグラフを1枚だけ引用して終わると、μ の識別を捨てることになる。3枚を重ねた図が必要な理由がそこにある。

感度 S = 20 log₁₀(平均) は、平均本数の対数である。SN比と感度が同じ方向に動く行が多く、ばらつきの削減より平均の底上げが利得の本体である。事例の確認も平均 6.7 本から 8.3 本への底上げが主で、ばらつきは残った。ツールがSN比と感度を併記しているのは正しい。SN比だけ見て「ロバストになった」と言い切ると、残差の3本(N₃ の7本)を見落とす。

No. n₁ n₂ n₃ 掲載SN 教科書SN 比率
1 6 3 4 23.46 11.73 2.00
2 6 5 2 19.50 9.75 2.00
3 6 6 5 30.63 14.97 2.05
4 7 6 4 28.10 14.33 1.96
5 6 6 7 33.44 15.97 2.09
6 8 6 7 35.85 16.72 2.14
7 9 8 7 34.99 17.92 1.95
8 8 10 7 36.28 18.14 2.00
9 10 7 9 37.95 18.46 2.06
10 8 7 3 26.53 13.09 2.03
11 10 5 9 32.31 16.82 1.92
12 8 6 9 32.90 17.31 1.90
13 9 9 7 36.46 18.23 2.00
14 6 7 7 32.82 16.41 2.00
15 6 7 5 19.70 15.32 1.29
16 2 5 10 31.73 10.00 3.17
17 6 6 6 28.10 15.56 1.81
18 4 1 5 3.35 4.35 0.77

12. 解析支援ツールの表とグラフが示していること

因子レンジ。位置が常に最大。角度は最小。質量のレンジは μ=0.2 で相対的に大きい。

13. 限界と、次に手を付ける場所

2D円盤はピンの起き上がり、スキットルの3次元回転、ピンデッキの溝、オイルパターンの空間分布を持たない。行単位で事例の表5を追えないのは、その欠落の直接の結果である。欠落を埋めるために μ を動かすのは間違った補正である。μ はピン−床の摩擦であり、欠落した3D回転の代理変数ではない。

角度の実効係数 0.25 は、1° の効果を小さくする。事例が第2段で 1° に上げた判断を、このモデルは検証できない。検証したいなら K_ANGLE を1に戻すか、入射位置をピンデッキ座標で直接指定する実験を足す。それは再計算ではなく、別実験である。

L18 No.6 が3つの μ で 9, 9, 10 に張り付くのは、モデルの分解能の上限を示している。飽和した行を「再現が良い」と読んではいけない。飽和は識別不能である。分解能を上げるなら、倒ピン本数だけでなく、1番ピンと3番ピンの入射座標、あるいは残ピンの番号を特性値に加える。望大特性の1スカラーは、教材としては十分で、ピンアクションの診断には不足する。

SN比のdBを事例の表10(26.9 dB → 36.6 dB)と並べない。規約が違う。並べてよいのは本数である。標準 6.7 本 → 最適B 8.3 本に対し、μ = 0.2 は 6.67 本 → 8.33 本。教材としてこの一致を使う。研究として3Dに進むときは、減衰同定とポケット入射角を先に戻す。

13. 限界と、次に手を付ける場所

利得。μ=0.4 のdB利得が最大なのは標準が沈んだため。採用基準にはしない。

14. 処方

3論文は数値として受理する。システムは再計算しない。環境因子は μ = 0.2 を採用する。最適制御の芯はポケット(13.25 cm)・16 lb・高回転である。球速はモデル内では 8 m/s だが、実レーンでは事例どおり後段ノブにする。角度はSN比上 0°、目視のポケットが必要なら 1° を許す。

教材として出す文章は短くする。「オイルが変わっても、まずポケットに入れる。球は持てる最重。回転は多め。速さはレーンを見てから落とす」。この4文が、54×3回のシミュレーションと、2020年の事例研究が共有している中身である。

次の開発は μ を増やすことではない。残ピンの番号を記録し、No.6 と加法最適の差がどのピンで起きているかを見ることである。それが分かれば、回転の相互作用は推測ではなく設計入力になる。

数字をもう一度、ボールバッグに貼る付箋として書く。環境因子 μ = 0.2。制御は 0°、13.25 cm、8 m/s、16 lb、10 rad/s。確認は 10、8、7 本、平均 8.33。標準は 6、7、7 本、平均 6.67。利得 +1.67 本、+1.73 dB。位置 26.5 cm は使わない。球速は実レーンで落とす。角度はポケットの見え方で 1° を許す。この付箋は、2020年の事例確認の平均 8.3 本と重なる。重なるのは本数であり、掲載のデシベルではない。

14. 処方

L18条件平均の倒ピン本数。現実第2水準 6.67 本の線に、μ=0.2 と 0.3 の中央値が沿う。

参考文献

  1. 篠原主熱・種原大智: ボウリングのパーフェクトゲームを目指した品質工学に基づく最適投球方法, 品質工学 Vol.28 No.5, 2020.
  2. 塩沢潤一: パラメータ設計解析支援ツール, 品質工学 Vol.28 No.3, 2020.
  3. 田口玄一: 品質工学の数理.
  4. Banerjee & McPhee, Procedia Engineering 72 (2014).

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